冬の始まりのお出かけ*沖田くんとうさ銀
新しい綿を手でちぎったみたいな、やわらかそうな雲が高い場所に少し浮かんだ、すきっと晴れた冬の始まりの日の事です。
うさ銀と沖田くんは、首もとにしっかりマフラーを巻いて、暖かい服を着込みました。そして、
お昼過ぎに屯所を出発し、少し歩いて、林からほど近い場所にある公園に遊びに来ていました。道中、うさ銀は、沖田くんに肩車されて移動しました。これは、うさ銀が道を歩いて、疲れたりしないように、という配慮です。うさ銀はとてもかわいがられているのです。
お昼過ぎに屯所を出発し、少し歩いて、林からほど近い場所にある公園に遊びに来ていました。道中、うさ銀は、沖田くんに肩車されて移動しました。これは、うさ銀が道を歩いて、疲れたりしないように、という配慮です。うさ銀はとてもかわいがられているのです。
公園には、大きな廃材タイヤをたくさん並べて作った跳び箱、木目を活かした、つやっとしたブランコ、明るい水色で塗られた小さめの滑り台があります。うさ銀は、たくさんある遊具を使って、うれしそうに遊びました。この公園は、アクセスの良い町中の公園と違い、人影もまばらで、遊具の周りには今、誰もいません。遊具たちはしばらくの時間、うさ銀専用の遊具になってくれたのです。
うさ銀は、とんでもない跳躍力を持っているので、特に跳び箱は大得意です。跳び箱に走りより、続けざまに、ぴょんぴょん飛びまくります。とても軽やかで、うさぎらしい姿です。うさぎだけど、水を得た魚のようです。ばんばん飛び跳ねます。
跳び箱を思う存分跳んだあとは、滑り台で遊びます。うさ銀はだだだっと滑り台の階段をかけ登り、サーッと滑って降りてきます。到着地点では、うさ銀が滑った時の勢いで、前のめりになって転んだりしないように沖田くんが屈んで、手を伸ばして待っていてくれています。うさ銀は滑った勢いのまま、沖田くんの腕の中に飛び込んでしまいました。沖田くんはうれしがっていましたが、うさ銀的には、ちょっと不覚を取ってしまった気持ちです。
次はブランコです。うさ銀は、ブランコにサッと座り、沖田くんに背中を押してくれるようにお願いすると、沖田くんは、すぐに来てくれて、うさ銀の背中をそっと押してくれました。が、そっと、ですと、ブランコが高い場所まで揺れません。なんだ、つまらん。もっと力を入れて押すようにと、うさ銀が言うと、沖田くんは「危ないですぜ。高い所まで揺らすのは、うさ銀ちゃんが、もっと大きくなったらにしましょう。大きくなったうさ銀ちゃんも、かわいいんでしょうねィ」と言って笑い、うさ銀の頭を、そっとなでました。
いきなりなんのはなしだ…と、うさ銀は毒気を抜かれてしまいました。そして、仕方ないやれやれ、という風に頷き、高い所まで揺らしてもらうのは、まあ、保留にする事にしました。大きくなったらびゅんびゅん高い所まで揺らしてもらえばいいだけの話です。
うさ銀が一通り遊具で遊んだのを見計らって沖田くんは、うさ銀を抱き上げ、近くにあるベンチに座らせてくれました。
これから、おやつタイムです。
沖田くんは持ってきたカバンから、お手拭きを出すと、うさ銀と自分の両手をお手拭きで拭い、その後で、かわいいみかんの絵がたくさん付いた紙袋と、水筒に入ったにんじんいちごフルーツ入りの暖かい紅茶を取り出して、ふたに注ぎ、うさ銀に手渡してくれました。
紙袋にはクッキーがたくさん入っていて、袋を開ける前から、もはやいい匂いがします。うさ銀は袋の口の部分に鼻を近づけて匂いを吸い込みました。アロマです。甘い、香ばしいおいしそうな匂いで、からだの中がいっぱいになった気がしましたが、匂いでお腹は膨れないのです。うさ銀は急いで袋に手をつっこみ、うずまきみたいな形で薄くオレンジ色をしたクッキーを取り出すと、大きな口を開けて頬張りました。しゃくしゃく噛むと、ふわっと、みかんの匂いと味がします。うさ銀は、隣に座ってうさ銀の事を見ている沖田くんを見上げ、「みかんのくっきー、おれ、はじめてたべた。うまい」と言いました。
沖田くんは、やっぱり笑っていて、「よかった。全部食べていいですよ」と言ってくれました。
うさ銀は、ちょっとうつむいて、「うん」と言いました。
沖田くんは、缶入りのお茶を飲んでいました。彼の分はそれだけでした。
沖田くんが、自分の事なんて、考えず、うさ銀の好きそうなおやつを探して来てくれている事をうさ銀は、ちゃんと知っていました。だから、うさ銀が今食べているクッキーを勧めても、受け取ろうとしないだろう事も。うさ銀が、おいしい、と喜んで、全部自分ひとりで食べてしまった方が、沖田くんが、うれしい事も。
うさ銀は、耳をぱたぱたとさせながら、しゃくしゃくたくさんクッキーを食べました。お茶はふんわりと甘くて、空には、わたあめで出来た魚みたいな雲が遠く浮かんでいて、日の光に照らされて縁が金色に光っている遊具たちがあって、…隣には、うさ銀に優しいひとがいて、木にとまったヒヨドリがピーピーと鳴いていて、木の影はヒヨドリの動きと風の力で、ゆっくりさわさわ動いています。
うさ銀が隣に座る沖田くんを見上げると、沖田くんは空を見ていました。
ああ、あの魚みたいな雲を見ているのかな、とうさ銀は思いましたが、違っていました。
「あの雲、うさ銀ちゃんにちょっと似てますねィ」
沖田くんが少し笑って、振り返りながら言うので、うさ銀も空を見てみたら、さっきまで魚似ていた雲はもう形を変えていて、ちいさいうさぎみたいな姿になっていました。
空では魚がうさぎに変わる事もあるのです。白く、ふわふわしたうさぎでした。
うさ銀は、静かにうさぎを見上げます。手の届きそうにない場所に浮かぶうさぎなのに、なぜか、ほんの近くに見える気がして不思議でした。
たっぷり運動をした上、お腹がいっぱいになったうさ銀は、そのままベンチの上で眠り始めてしまいましたので、沖田くんはうさ銀を起こさないように静かに抱っこして、うさ銀の頭を自分の胸のあたりにもたせかけた姿で帰り道を歩き始めました。
うさ銀は、すやすやと眠っています。夢を見ているのか、眠ったまま、耳をパタパタとさせたり、何かむにゃむにゃと呟いています。
沖田くんは、やっぱりちょっと笑って、うさ銀の頭をずっと撫でてくれていました。
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あかこまどり
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女性
自己紹介:
1827とジュリジャンとカヲシンと沖銀土銀が特に好きです。
ごくまれに同人活動をしている場合もあります。
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※※※
むくろちゃん。
この髪型のテンプレを見た瞬間、たまらずに作ってしまいました・・・!(^//^;)