紙飛行機の恋 3*沖銀
やっぱしさあ、この日も夜のバイトしてて、あーキャバのキャッチね。で、人にぺらぺら声かけながら、ふって、道の向かいを見たら、あれだ。銀さんと、あの相手の兄ちゃんが歩いてて、…っーか、違うか、銀さんは歩いてる内に入んねぇよね。多分さあ、酒入ってべろべろになった所を回収されてる所なんだわな、銀さん、兄ちゃんにおぶられてて、腕も体もだらーんってなってんの。銀さん、あれもう半分寝てんだろな。重たそうだよ、力抜けてる奴ってほんと重いんだよ。でも、あの子、あの兄ちゃん、嫌そうな顔なんかしないのな、やっぱりな。
左肩に伏せられてる銀さんの頭の方、ちらって見ちゃあ、困ったように笑ってた。
しあわせそうだよ。嬉しいんだよな、あれ。見れば分かるよ。
なんかさ。なんだろ。
別に銀さんが誰とどうこうなろうが、
ほんと、どうでもいいんだよ。
俺に迷惑さえ掛けなければ。これが一番だよ。
でもさ、俺もいい年こいたオッサンで、
まあ、他人に聞いていい事と、聞いたらあんましよくない事の区別くらいついてる訳。でも、なんか、やっぱり俺も野次馬な所がある訳よ。こういう所は年食ってもなくならない所だよね。
昼過ぎにさ、たまたま、パチンコ屋で銀さんに出くわして、ふたりして、ほぼぼぼスッカラカンになってさ、あー今日はもう駄目だわ、って。店を出て、ブラブラと何となく公園まで歩いてベンチに並んで座って、俺は上を見て、葉っぱの隙間から差す陽の光を見てた。隙間からの光ならあんましまぶしくないから。まあ、ぼやーっと。視界に入った銀さんも、俺と同じようなかっこしてた。目を閉じてあくび。俺にもその、あくびがうつった。
昼間から何やってんだ、って自分でも思ったよ。だらだらだよ。
正面に向き直って周りを見回したら、向こうの滑り台のある方から、こっちの芝の上に、どっかのガキ共が走りこんできて、懐から取り出した紙飛行機で、びゅんびゅん飛距離を競ってるのが目に入った。無邪気なもんだよ。
いい天気でよかったな。
そうやって、
ぼやーっとしてて、体の力抜けてたせいかな、口もなんか、ゆるくなっちまってて、あんまし聞かない方がいいんだろうなー…って思ってた事を気づくと聞いてしまってた。
「…銀さんさぁ、あの兄ちゃんの事、マジでそーなの?」
銀さんは、何かに気づいたように、一瞬だけ上に目をやって、そして閉じた。
俺みたいに木漏れ日を見ただけか、
それとも、他の何かを思い浮かべたんだろうか。
そしてそのまま、顔を正面に向け、目だけでこっちを見て、
「デリカシーどこに置いてきたよ」と
軽くため息をついた。
でも、ほんの少し笑みも含んでいた。
そのほんの少しの笑みが。
この前、銀さんを背負って歩いていったあの兄ちゃんの、表情とそっくりだったのが、多分、答えでいいんだろう。
芝の上で遊ぶガキ共の後ろにある遊歩道から、あの兄ちゃんが歩いてくるのが見えた。銀さんを見つけて、名前を呼んだ。
跳ねるようで、丁寧で、優しい声で。
恥ずかしいんだけど。俺が見えてないよね、きみは。
いいけど。
…ああ、はい、あー…
分かったよ。
さっき銀さんが、何かに気づいたような仕草をしたのは、これだったのかね。
俺はもう行くからな。
恥ずかしいしー。邪魔者だろうしー。
…いい天気なんだし、せっかく会えたんだから、そこのガキ共にならって、ふたりで仲良く遊べばー。
銀さんが、あの兄ちゃんの名前を呼ぶ声を背中に聞いた。
跳ねるようで、丁寧で、優しい声だよ。
▲
ここで一回おしまいです。
また機会があれば、長谷川さんと
沖銀なお話は書いてみたいです。
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ここで一回おしまいです。
また機会があれば、長谷川さんと
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1827とジュリジャンとカヲシンと沖銀土銀が特に好きです。
ごくまれに同人活動をしている場合もあります。
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※※※
むくろちゃん。
この髪型のテンプレを見た瞬間、たまらずに作ってしまいました・・・!(^//^;)