zakki:

（フライングでの沖田くんお誕生日お祝いのお話です。）




ある日のお昼過ぎ。
「そういえば、そろそろ総悟の誕生日だな。
何か欲しいもんあるか、聞いてみるか」
…と、近藤さんたちが廊下でお話をしているのを、
たまたま、廊下にある柱にらくがきをしようとお部屋から出てきた
うさ銀が聞きました。

(おきた、たんじょうびなのか…)
うさ銀は、そこで初めて沖田くんのお誕生日が
７月の８日である事を知りました。

沖田くんは、うさ銀が屯所で暮らすようになって
すぐ、うさ銀のお誕生日がいつなのか聞いてくれて、
１０月１０日には、おおきなにんじんケーキと
たくさんのおもちゃを、うさ銀にプレゼントしてくれたのに
うさ銀は今の今まで沖田くんのお誕生日を
知らなかったし、ましてや、たずねる事もなかったのです。
うさ銀は、その事に思い至りました。
そして、ほんの少し、
（わるかったな…）という気持ちになりました。

うさ銀がちいさな頃から、
先生やうさ杉くん、うさ桂くんたちは、みんなで
うさ銀のお誕生日をお祝いしてくれました。
うさ銀も、みんなのお誕生日をお祝いします。
今でも、誰か、知り合いのうさぎのお誕生日が来ると、
うさ銀は屯所を抜け出し、お祝いに行っています。
その日は、仲良しなうさぎの仲間たちが
たくさん集まって、みんなでお祝いをするのです。
仲良しのお誕生日をお祝いするのは、とても楽しいです。
生まれてくれてありがとう、会えてうれしい、を
伝える日で、とても重要な日です。

あと少しでお誕生日の日を迎える
沖田くんは、いつもうさ銀にとても優しくしてくれます。
うさ銀の事を毎日考えて、うさ銀の好きそうなおかしや
お野菜、果物などをたくさんうさ銀にくれますし、
すてきな服やおもちゃも買ってきてくれます。
ぬいぐるみを作ってくれたり、マフラーや手袋を
お手製してくれる事もあります。
そして何より、うさ銀の前で彼は、
いつもにこにこ笑っています。
うさ銀と仲良くしたいと、いつも思っているからです。
彼が、うさ銀が毎日楽しく暮らせるように、
とても大切にしてくれている事を、
うさ銀はちゃんと知っています。
知ってはいますが、今まで真剣に考えて
みた事はありません。
考えなくとも、沖田くんはいつもうさ銀に優しく、
そこにいてくれましたから。
…今、うさ銀は少し真剣に。沖田くんが
自分にとってどんな存在なのか考え始めました。

…少なくとも、だいきらいではありません。
では、きらいでしょうか。
……。…。
それも違うかもしれません。
なら。
それなら。きっと。


うさ銀は、沖田くんのお誕生日を、
仲間のうさぎのお誕生日をお祝いする時みたいに、きっと
うれしい気持ちでお祝いしよう、と思いました。